眠れない夜とは
文字の通りの意味でも使うが
もう少し拡張することができて
いわゆる「夜」という時間軸に無くとも、
眠れない夜と表現できる場合がある。
眠れない、という用言と結びつき
「眠れない夜」という句になっていると
夜という言葉を含みながら、その時間軸から解放される。
正確には「眠れない夜になりそうだ」という瞬間あるいは体験が
そのまま「眠れない夜」という言葉で形容できるということだ。
ただしそれは、ネガティブな瞬間や体験を表現する場合に限られる。
眠れない、という言葉に後ろ向きなニュアンスが伴うためである。
具体例を考える。
「嫌な出来事があったわけでもない。雨が降っているわけでもなければ、誰かに悪口を言われたわけでもない。なのにどうしてか、何をどうしようという気力が一切、湧いてこない。何かを頑張らなくてはいけない気もするし、何もしてなくてもいいんだ、とも思う。誰かと話して気を紛らわしたいような気分のような、誰とも話したくない気分のような。そんなことを考えていたら、ズッシリと重たく、少しずつ腐り始める自分を感じだす。午前10時過ぎの、日曜日。」
まさに眠れない夜である。
時間で言えば午前中であって、朝と昼の間か、少なくとも絶対に夜ではない。
であるのに、なぜか夜という表現がピッタリとはまる。
「このまま夜になれば、眠れないだろうな」といった状況であるところから、そのまま「眠れない夜」と表現できる。
これは主観的に使う表現である。
「どうした?気分悪いの?」
「いや、ちょっと、眠れない夜なんだ、今」
「はぁ?いま10時だけど」
「世の中はね。でも夜なんだよ、眠れないんだ」
「わからん。何をいっとるんだて」
わかる人にはわかるし、
わからん人にはわからんことだ。
文章をブログで公にするのは
批判や悪口を言われるリスクを伴う。
何か嫌なことを言われる、書かれるとばかり考え出すと、眠れない夜が今すぐにやってきそうな気がして、公開するためのボタンを押すのが怖い、朝方の5時であった。